草創と守文と孰れが難き – システムの運用・保守における陰の課題

草創(創業)と守文(守政=維持)と孰れが難き

貞観政要の一節で
構築するのと維持するのどっちが大変?という質問に対し、
どっちも大変だけどこれからは維持の時代だ。維持をしっかりしていこうよ。って答えのお話です。

僕は貞観政要の専門家ではないので詳細はこちらのページに譲ります。

今回はソフトウェアの維持についてです。


ソフトウェアやシステムの維持は運用・保守に大別されますが、不人気のジャンルです。
不人気な理由はおよそ3つになります。

①トラブル対応が中心で制限時間が短くストレス大
②何も起きないことが当たり前で万事無事を維持しても褒められない
③トラブルシュートのスキルはつくがそこでしか使えない限定的なスキル

ソフトウェアベンダーは多く存在しており、オーダーメイドのシステムやアプリケーションを作り上げてくれます。
一方で、維持・運用はユーザーサイドで行うというのが基本です。
保守費用等をとるケースもありますが、基本はトラブル時の電話対応くらいです。

よほど大きなソフトウェアになると、運用・保守の専門部隊がいて常駐で対応するということもあります。
大抵は莫大な維持費が発生し予算策定の際に見直しの対象になります。


草創(創業)と守文(守政=維持)と孰れが難き

”山本七平 帝王学 [貞観政要]の読み方”では創業を陽性、維持を陰性の大変さとしています。
日の当たらない維持について巧く言い表しています。

織田信長はもてはやされますが、徳川家康は少し不人気。
「家康の野望」・・・売れなさそう。

織田信長:桶狭間の合戦の1560年 – 本能寺の変1582年(32年間)
豊臣秀吉:本能寺の変1582年 – 大坂夏の陣 1615年(33年間)
徳川家康:大坂夏の陣 1615年 – 大政奉還 1867年(252年)

徳川家康は徳川時代の礎を築き江戸時代は死後も200年以上続きました。
圧倒的功績にも関わらず、タヌキだなんだと「座りしままに食う徳川」はあまり好かれません。

鎌倉幕府もしかりです。
源頼朝の死後、北条家の独壇場です。
源頼朝の妻、北条政子が政権を握ってから北条家の執政が約150年続きました。
北条家はすごいですね。Wikipedia

でも、あまり人気がない。僕が知る限り源氏を好きな人はいても、北条家が好きという人はお目にかかったことはありません。
統計をとったわけではないので言い過ぎかもしれませんが。

偉人と並べるのもアレですが、僕が作った仕組みで一番長く使われているものは10年程度です。
開発期間は6カ月でしたが、運用期間は9年以上ですかね。
僕のせいでサラリーマン人生の1/3を費やしている人がいます。
もちろん僕は「〇〇を作った人」とあがめられ、維持・運用している人は「何をやってるかわからない人」です。
何かごめん。


総じて言えるのは、多くの人が「維持するより作る方が好きだ」ということです。エンジニア自身もそうですが、周囲も同じです。
新しい方が好き。

老人ホームの介護士と幼稚園・保育園の保育士の2択なら、あなたはどちらを選びますか?

さて、南山大学の青山幹雄がご長寿システムの問題点について指摘していました。
老朽化したITシステムが企業の成長を阻害する

20年・30年選手のソフトウェアは僕もいくつか知っています。
AS/400なんて言葉を聞くと「古いんだろうな」って思います。
会社の中枢を担っており重要な仕組みなのに属人化していて周囲は腫れ物扱い。
それでいて、そのシステムに熟知していることは評価されない。
必要だけど誰にも理解されない、怒られるけど褒められない不条理そのものです。

運用・保守のエンジニアというのはそういう人です。


冒頭の「草創(創業)と守文(守政=維持)と孰れが難き」
の太宗皇帝は貞観の治と呼ばれ良政の手本とされます。
おそらく維持の大事さに気付いていたからでしょう。

この分野、解決策を見出せばブルーオーシャンだと思うんですよね。
僕はやりませんけど。
ほめられたいので。

おわり

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