プログラマーと連休のお話

あなたはプレイングマネージャーとして、
マネージャー兼プログラマーで活躍するエンジニアです。
年末年始の連休、出勤するかどうかはあなたの裁量で決められます。
プロジェクトメンバーの連休の運命を握るのもあなたです。

あなたは、プレッシャー、恐怖、葛藤に打ち勝ち
一切休日出勤しない方針を打ち出せるのでしょうか。

序章

街はすでに連休前の浮かれモード。
世間は年末で赤一色です。
昔ながらのクリスマスソングがそこかしこで流れ、街はいささか浮かれモード。
きっと誰もが慈愛に満ちたイエスの誕生日を過ごし、
温かい幸せな年末年始を迎えることでしょう。
一部の職業を除いて。

連休2週間前 – 会社編

会社にて

期限が迫る中、遅れるプロジェクトに荒れるメンバー。
何の嫌がらせか納期はいつも連休明けです。

プロジェクトマネージャーであるあなたは、休みをとるか否かで迷います。
休日出勤は禁断の果実。
スケジュール日数を減らさず仕事を進められる錯覚に陥ります。

とある、メンバーはこう言いました。
休んでて間に合うハズがない。休日出勤すべきだ!!

別のメンバーはこう言いました。
どうせ無理なんで、自分は休日出勤する気でいますよ。

もう一人のメンバーは不安そうにこう言います。
休める・・・わけないですよね

仮に、休日出勤無しの方針を打ち出せば
あなたは彼らの代わりに納期遅れの十字架を背負います。
大した話ではありません。
会社からの「休んでおきながら間に合わないとはどういう事だ!!」に対し
メンバーは「自分は休日出勤するつもりだった」という言い訳ができますが、あなたはできません。
ただ、それだけの話です。

まだ、連休まで時間はあります。
もう少し悩んでもかまいません。

連休2週間前 – 自宅編

自宅にて

「ねぇ、次の連休は何しよっか。楽しみだね。」
愛するワイフが言います。

「ごめん、まだ休めるかどうかわからないんだ。」と、答える。

テレビを付けワイフの作った夕食を食べながら
ワイフの話に上の空で相槌を打ちます。

「考え事?」
「うん、そうだね(休みとったら納期間に合うかなぁ、ギリギリよなぁ。)」
「これおいしい?」
「うん、そうだね(こないだの仕様変更をあの方法で対応すれば・・・)」
「これは?」
「うん(幾分か時間短縮できるか・・・)」
「『うん』しか言わないね」
「うん、そうね(あぁ、あの部分どうなってたっけ、明日確認しないと・・・)」
「今日のご飯、頑張って作らなきゃよかった」
「うん・・・・ん・・・(年末の番組つまんねーな)」

連休1週間前

会社にて

トゥルルルル・・・・。
現在進行中のプロジェクトのお客さんから電話です。

もしもし・・・、どうもお世話になっております。
えぇ・・・はぃ・・・そうですね。現在は順調に進捗しております。
えぇ・・・えぇ・・・。
なるほど・・・そうですね。
弊社の年末は29日の午前までです。
午後は大掃除ですので連絡がつかないと思います。
年始は4日からです。

・・・そうなんですね。御社は27日までなんですね。ほぅ、年始は7日から。
10連休ですか。良いですねぇ。どこか行かれるんですか?
へぇ・・・良いですねぇ。

たわいもない会話を終え、電話を切ります。

ほ・・・、という安心も束の間、一度電話があった日は電話が続きます。
大慌てで先ほどのお客さんが電話してきます。
前回のバージョンで不具合が発生しユーザーが困っている。
いますぐ対応して欲しいとのこと。

普段からチョコチョコ出ていて、影響がないから無視されているような現象です。
そんなものを何故、今・・・。
と、言いたいのをぐっとこらえて

おそらく普段から出ているような現象ではないですか?
ご不便をおかけしますが、今日のところは我慢してそのままご使用いただいて、対応は年明け落ち着いてからお話ししませんか?
対応方法や対応可否も含めて・・・。
と、その場をやり過ごします。
やれやれ。落ち着いたか。

年末の数日間は魔物が棲んでいるとしか思えません。
ここから不具合や勘違い、ヒューマンエラーを含めて様々な連絡が来ます。
きっと連休に仕事を残して、もやもやしたくないのでしょう。
投げられるものは全てこっちに投げたいという。
まぁ、全ては言うまい。

お客様の年内最終日

トゥルルル・・・

もしもし・・・どうもお世話に・・・
あ、今日が最終日でしたね。
今年はどうもお世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。

えぇ、ウチは年明けは4日からですよ。
年明けはすでに作業してますんで、またよろしくお願いいたします。

・・・ん?
もう一度言ってもらえます?
えぇ・・・え!?それって今開発してるものに、かなり影響がある話じゃないですか!?
え?絶対に必要?気づいてると思ってたって?議事録?
この説明ってそういう意味だったんですか?
いやいや無理でしょ。
この一行でそこまで読み取れませんて・・・。

次のバージョンには絶対必要って言われても納期年明けでしょ。
いや、無理ですって。
え?それが出来てないとお金は払えないって??
いや・・・そんな・・・でも・・・ひどい・・・。
えぇ、そうですね。はぃ・・・。
・・・・わかりました。

では、良いお年を・・・。プツ、ツーツー。


言いにくいことは、最終日に言い逃げですか。
きっとお客様はスッキリして良い年末年始を迎えられることでしょう。

メンバーは不安そうな目で電話のやりとりを見ています。
明日、最終日。

さぁ、材料は出揃いました。
連休を取るか否か、決断の時です。

意思決定の時

あなたは悩みます。

選択肢は2つ。「休日出勤をする」か「休日出勤をしない」か。

メンバー達は不安そうにこちらを見ています。

自分も人の子。連休は欲しい。
本当に休んでいて良いのか。
ただの現実逃避ではないか。
さっき、決定的な仕様変更があったじゃないか。
今の進捗では、仕様変更をこなしつつなんて絶対に間に合わない。

しかし・・・何でこの程度の仕事がこんなに遅れているんだ?
自分がもう一人いたら、こんな大人数でなくても仕様変更をこなしつつ無事に納品できるのではないか?
いや・・・そんな仮定の話を考えても仕方がない。

今は2つに一つ。出勤するか否かだ。
たった5日しかない連休、1日たりとも減らしたくない。
しかし、お客さんは確実に取れる10連休があるのに、何でウチはたかだか5連休が自由にとれないんだ。
経営力の違いか・・・。

いや、それは違う。この会社を選んだのは自分だ。
それにプロジェクトが遅れているのは、マネージメントをしている自分のせいだ。
そんなみっともない事を考えるのはよそう。
何の解決にもならない。

えぇい、もうどうでも良くなってきた。
休むぞ。連休だ連休。来年のことは来年考える。
おれは休日出勤をやめるぞ!ジョジョ────ッ!!

覚悟の決まったあなたは、メンバー達に言います。
よーし、メンバー達よ!!
年明けに向けて、各自作業内容のメモを残しておくように。
連休中の休日出勤は一切なしだ。


一瞬ざわざわし後、みな顔が緩みます。

とあるメンバーは、
こんなギリギリに休み決められても予定が立てられない。
とか、文句を言いながら仕事に関するすべてのサイトを閉じ、旅館の空き状況を確認しはじめます。

また、別のメンバーは、
リーダーは頭がいかれた。俺は休日出勤するべきだと思う。
と、この期に及んで予防線を張りつつも、
普段の仕事ぶりから想像できないほど充実した作業内容のメモを残し始めます。
全てメモに吐き出して忘れる作戦ですね。
デキるやつです。

自分も大いなる決断を終えたことに安堵します。
しかし、自分の犯した罪の大きさに苦しむ時間はすぐにやってきます。

連休突入前の帰り道

明日から大連休です。

連休中、ワイフと何をしよう。どこへ行こう。
今日からしばらくは全てを忘れて眠ることができます。
これほどの幸せがあるでしょうか。

今晩は少し豪華なものでも買っていくか・・・。

背中に羽が生えたような解放感を感じつつ帰り道を歩きます。
周りの景色を見る余裕も出てきて、
騒々しいクリスマスソングから正月に向けた厳かな雰囲気に、街が変化していることに気づきます。

今年も終わりか・・・。大変だったなぁ。
来年は年明けから大変だなぁ。

・・・ところで、アレはどうなってるんだっけ?
しまった!!確認するのを忘れた!!
一旦、会社に戻るか。
いや、待て。
最後に見た時にはこうなっていたから・・・。
たぶん大丈夫なはずだ。たぶん。そう、たぶん。

一度気になりだしたら止まりません。
そういえば、もう一個のアレはどうなっていたんだっけ。
あっちの方はこうなっていたよな。
となると、アレが駄目だ。
完全に仕様の考慮漏れ・・・。

いや、ちょっと待てよ。
これはスケジュールの組み換えと割り振りの仕方を変えないと。
いや、でも・・・彼はもう手一杯だし、もう一人に任せると終わらない。

仕様の考慮漏れとお客さんの最後の仕様変更。どうしよう。
先にやっておけば、確認も楽だよなぁ。
独立して作れそうだし。
連休は5日か。

・・・家でやるか。

おわり




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