要件定義の苦手な日本人

要件定義は難しい。
要件定義ができる人材がいない。

良く言われることですが何故なのでしょうか。
僕の見解を少し述べさせて頂きたいと思います。

そもそも要件定義って一体何?

少し辞書で調べてみます。

1 大切な用事。「要件のみ記す」
2 必要な条件。「教育者としての要件を満たす」

Goo 辞書「要件」

なすべき仕事。また、伝えるべき事柄。用事。「用件を伝える」「すぐに用件に入る」

Goo 辞書「用件」

実は要件定義について明確に記述されている文書をあまり見かけた事がありません。
上記の辞書でも「要件」と「用件」が似たような扱いになっています。

システムアーキテクトに関する書籍は明確になっているものもありますが、プロジェクトマネジメントに関する書籍は多数が怪しいですね。
書いているのがコンサルタントとかだと、ほぼハズレ。
まぁ、全部読んだわけではありませんが今のところ当たりは引いてません。

では、本題に移ります。
僕なりの定義は以下の通りです。

要件定義とは「システムの機能一覧を作成すること」

これは僕が唯一尊敬する先輩から教わったことです。
その人は某大手のラブコールを断り続けながら、僕の前の会社に今も所属しています。
変な人です。

要件定義が「システムの機能一覧を作成すること」と初めて聞いた時は目からウロコでした。
それまで質問を繰り返し要望をまとめ業務フローを書いたり簡単な画面イメージや機能イメージを書いていました。
それが僕なりの要件定義だったのです。

しかし機能が一覧になったものを要件定義の最終成果物にすることには気づいていませんでした。
機能一覧で開発するものを合意していないから、要求の範囲内か範囲外かがわからないのです。
結果、相手の優柔不断を許すことになりトラブルにつながります。

一度プロジェクトの雲行きが怪しくなると顧客は成果物を受け取らずに難癖をつけ続けます。
仕様は変化しつづけデスマーチの末にプロジェクト中止。
メンバーは全滅。上司は開発者に責任転嫁。
金銭関係で顧客と揉め関係は最悪に。

関係者の言い分は以下の通り。

上司の主張

リーダーのマネジメント力が足りない。俺が若い頃は残業100H超えでもやり遂げた。根性が足りない。リーダーが馬鹿。

メンバーの主張

仕様がコロコロ変わる。ゴールが見えない。顧客が馬鹿。リーダーが馬鹿。上司が馬鹿。他のメンバーが馬鹿。

リーダーの主張

全部自分が悪い。自分が馬鹿。

顧客の主張

自分たちは要求を一切変えていない。かなり譲歩もしている。できないクセにできるといったのは何故?馬鹿なの?

第三者の主張

合意とりながら進めるのは常識。こんな状況になるのは責任者が馬鹿。会社が馬鹿。日本が馬鹿。

要件定義が苦手な日本人

要件定義書の文責は発注者側にあります。
受注側は発注者の言葉に従い要件定義書を作成する立場にありますが、機能一覧という設計ともとれる内容で合意する必要があります。
これが、まぁ大変。

今、僕は発注者側の立場でITベンダーと要件定義に参加させて頂いています。
発注者側は悩みや愚痴を冗談を交えながら軽快に話します。
しかしドキュメント化する段になるとこれまでの勢いはどこへ?
「たぶん・・・」から始めて「・・・の場合もある」という締めくくり。
到底何かを定義しようとしているとは思えません。
急激に失速する様は、まさにコント。

じれったいので、僕は受注者側の味方をすると面白くなります。
「・・の場合もある」という事は他のケースではどんなものがあるのですか?他のケース全部洗い出せますか?
全部洗い出せないならここで出たものを全ケースとして他は捨てられますか?
捨てられないなら捨てられないケースを出してください。
今ここに出さないと、ここに出ていないものは追加工数ですよ。

結構な人数なのに誰も答えられない。
落ち着きなくキョロキョロし始める様子は見ていて飽きません。

「ではここに出ているのが全てということで進めて下さい」と受注者側に言うと場は動きます。
直感的に問題があると感じたのでしょうか。
慌ててちょっと待ったをかけてくる人もいますし、論理的に捨てられるもの答える人もいます。

最初からサクっと答えればよいのに。
たぶん、こういう所なんだと思います。
決められない人間が定義する為の会議に大人数で参加している謎な状況。

日本人が要件定義できない理由をまとめます。

発注者側の問題

①会議の人数が多すぎる(責任を分散しやすい環境)
②「たぶん」とか「の場合もある」とか伏線を張る言い回しが口癖
③捨てられない
④言い出しっぺになって責任を取りたくない

受注者側の問題

①要件定義が何かわかっていない
②実は炎上するのが好き
③技術的な興味に走って事故

総括

話しは変わりますが、僕は非営利団体の委員会やコンソーシアムに多く参加してきました。
そういった会に参加できる時間に自由の利く人たちです。
肩書だけは一丁前で代表取締役やらがずらっと並びます。

そこで良く聞く愚痴の一つに
「要件定義ができる社員がいない」
というのがあります。

僕はニッコリして
「要件定義ができる人物とは一体どういった人物ですか?」
「要件定義とはどういったものを考えていますか?」
と、質問してみるのですが大した答えは返ってきません。

「どんな人かもわからない人」がいないというのはどういう了見でしょう。
社員の中にそういう人材がいたとしても気付けないと思うのですがね。

「要件定義」という言葉すら定義できていない日本人。
アカンで、しかし。

おわり

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