社長!ウチもクラウド化して生産性を向上させましょう!!
意気揚々と若い社員が社長に対してこんなセリフをいうCMを少し前に見かけました。
「クラウド化して生産性向上」は「風吹けば桶屋がもうかる」並みに、中身がブラックボックスです。
風吹けば桶屋がもうかる仕組み
- 突風で砂ぼこりが立つ
- 砂ぼこりが目に入り、視力を失う人が増える
- 三味線を買う人が増える(※江戸時代では、三味線弾きは視覚障がい者の代表的な職業でした)
- 三味線の皮の材料として猫の皮が必要になり、猫が捕獲される
- 猫が減るとねずみが増える
- ねずみが増えて、かじられる桶が増える
- 桶の修繕や買い換え需要が増え、桶屋が儲かる
参考:SAP 「なぜ“風が吹けば桶屋が儲かる”のか?「相関」と「因果」の関係を正しく理解」
クラウド化に成功しても生産性は悪化しますし、AIの導入に成功しても業務の効率は下がります。
疑似相関の話に似ていて「アイスクリームが溺死増加の原因」とか「コウノトリが赤ん坊を運んでくる」みたいなものです。
擬似相関の例として、ある街でのアイスクリームの売り上げを考えてみよう。
アイスクリームの売り上げが最も高い時期には、プールでの溺死事故も最も多い。
アイスクリームの売り上げ増が溺死増の原因(あるいは結果)であると主張することが、2つの事象間の擬似相関を暗に想定していることになる。
実際には、猛暑が両方の原因であろう。
猛暑は見えない潜在変数の例である。
別の例として、オランダの統計で、赤ん坊の出生数とコウノトリの数に正の相関が見られるという事例がある。
もちろん、それらに因果関係はなく、おそらく両方が9か月前の天候と相関しているだけと考えられる
少子化対策のためにコウノトリの巣を増やしましょう!!
アイスクリームの販売を禁止にして溺死を減らしましょう!!
だいぶ、メルヘンですね。
XX社のXXシステムを入れて業務改善しましょう!!
なんて言ってる人は、サンタクロースを信じてるタイプですか?
いや、すみません。いると思いますよ?
マーケティングの世界にはマーケットイン、プロダクトアウトという言葉があります。
市場調査して製品を投入するマーケットインと、とりあえず製品をつくって市場に投入するプロダクトアウトです。
近い言葉でシーズ志向、ニーズ志向というのもあります。
シーズ(種子)志向は技術やツールから入っていく考え方ですね。
一方ニーズ(要求)志向はユーザーの困りごとなどから入っていきます。
どちらからでも良いとは思いますが、動機付けが無いとその両方を行ったり来たりします。
有識者集めてブレーンストーミング・・・みたいなことをやってると終わらない。
こういうことに困ってるから何とかしたい!!
この最新技術を世間にアピールするぞ!!
そういう動機があれば「困りごとを解決する」もしくは「世間にアピールする」でゴールです。
しかし、動機がないとどちらも捨てきれず発散します。
僕の経験の話になって恐縮ですが、現場で役に立つものは公開できないことが多いです。
「アピール」と「現場の役に立つ」の両立。
できないとは言いませんが高難度です。
パッケージとして商品化したいとか、他の業務に横展開したいと言い始めたら泥沼ですね。
「汎用的に」という条件が入ります。
汎用的なものは往々にしてかゆいところに手が届きません。
現場の意見を聞くと世間には公開できないし、
世間にわかりやすくアピールできるものは業務改善のメリットが少ない。
汎用的につくるとかゆいところに手が届かないし操作は複雑になる。
専用でつくると横展開できないし・・・。
前置きが長くなってしまいましたが、今回のタイトルです。
成功はない、おおむね成功を目指せ。
現場のメリットと世間へのアピールを実現し、
細かい要望に対応できる汎用パッケージができたらいう事なしです。
残念ながら、全ての要求は満たせません。
周囲はすべてを要求するかもしれません。
でも担当するあなたは、きちんと捨てることが大事。
採用するものを選ぶのではなく捨てるものを決める。
「現場の改善」か「世間へのアピール」、「汎用性」か「使い勝手」です。
両立は不可能と心得ましょう。
とある企業ソフトウェアは、使い勝手を捨ててデザインを重視しています。
真冬の寒空にミニスカートで出歩く人も同じですね。
捨てれば道は拓かれます。
同時に覚悟もできます。
え?専用で作ってるんですから、横展開なんてできませんけど?
逆もまたしかり。
え?汎用的に作ったんですから、そんな細かいことできませんよ?
いけしゃあしゃあと言い切るのです。
プロジェクトオーナーもユーザーもわがままです。
第三者はメリットを感じたら、ちょうちん行列に参加してきます。
伴って理想論や意見が増えます。
100点はありません。
ちゃんと60点を目指しましょう。
成功はない、おおむね成功を目指せ
おわり
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