製造業でシステム化が受け入れられづらい理由は何か?
僕は元IT企業出身で製造業の製造部門に籍を置くちょっと変わった人間です。
立場上、ITベンダーや技術営業・システムエンジニアなどから上記のような質問をよく受けます。
少しこの辺りについてお話させていただこうと思います。
ちょっと大き目規模(1000人以上)の製造業への提案を対象にお話いたします。
ご興味があればどうぞお付き合いください。
前置き
製造業でシステム化を行うねらいは以下の2つです。
- 入ってくるお金を増やす(バンドルパッケージやサービス)
- 出ていくお金を減らすか(〇〇管理システムなどの業務効率化システム)
しかし製造業のシステム担当者(経営者を除く)がシステム化を行う理由は以下です。
- 褒められたい
- 責められたくない
提案者は会社の利益を訴求しデメリットや不安を解消すれば受け入れられると考えます。
しかし極めて個人的・感情的な理由で導入可否が決定します。
システム担当者のモチベーション
1000人以上の規模の企業ともなればおよそ平均以上の暮らしができます。
システム化の担当者として外部と折衝する人であれば立場もそれなりでしょう。
このまま静かに暮せばある程度裕福な暮らしが保証されており減給やリストラもありません。
逆にリスクをとって失敗すれば後ろ指をさされます。最悪立場を追われます。
この恵まれた人がリスクをとるモチベーションは何なのでしょうか?
「上からやれと言われたから」それに尽きます。
やりがいなどを語る人もいますが言わされてるだけです。
やらないと上から責められます。
システム担当者のボーダー
上から言われた担当者はシステム化について相談してきます。
しかし、
- 責められたくない → 怒られたくない、責任を負いたくない
が前提にあります。
成功報酬が見合うなら説明責任やリスクを負うでしょうが旧態依然の製造業です。
高いリスクをとって得られるのは「精神的な何か」と「守られない口約束」のみです。
出世においても年功序列(+個人的な好き嫌い)で能力評価ではありません。
ホームランは狙わず手の内でできるヒット狙いが賢い生き方だったりします。
しかし打算はあります。あわよくば一旗揚げたい。
- 褒められたい → 子供や孫に自慢したい、記事に取り上げられたい、役員に認められたい、有名人に知ってもらいたい、出世したい
僕が外部ベンダーだったころの想像
ここまでの話で通常以下の形を想像すると思います。
僕もIT企業勤めで製造業に提案していた時はこのように考えていました。
しかしそのような世界は実在しませんでした。
実際の状況
実際製造業では褒めに対し何倍も責められます。
通常システム導入は担当者一人で決定することができません。
以下のような人達への説明が必要になります。
- ステークホルダ(株主・経営者)
- 関係部署の責任者
- ユーザー(現場)
- 調達
- 経理
- 上司・部下
- オブザーバー
- 各種ハンコを押す人
説明相手が求めるのは効果・嬉しさ・リスク・デメリット・他の方策との比較(ベンチマーク)など。心根は自分に被害が及ばないかどうかと自分の手柄にできそうなものはないか。
そのため 説明する度に色んな方面からマウントされ・・・ 多くの有識者からご指導頂くことになります。
よほど特殊な性癖をお持ちでない限りストレスは相当なものです。
製造業の人間にとってあら捜しは呼吸と同じです。
徹底的に追及されます。
心が折れるボーダーライン
心が折れるボーダーラインは人や立場によって異なります。
一切の知識武装をせず、滅多打ちに遭いケロッとしてる鋼鉄のハートも稀にいますが本当に稀です。
ホワイトカラーはほんの少しの指摘で数か月放置する豆腐メンタル(懐かしい)がほとんど。
まとめ
製造業でシステム化が受け入れられづらい理由は何か?
製造業でシステム化が受け入れられづらい理由は何か?
冒頭でご説明しましたとおり「責められたくないから」です。
ですが、担当者の口から聞く導入お断りの理由はこんな感じですかね。
- セキュリティ面の不安
- 可用性の不安(停止が許されない)
- ユーザーの能力不足(現場がついてこれない)
「セキュリティ面の安全性」「可用性の高さ」「操作の容易さ」をいくら訴えてもおそらく響きません。
おまけ「製造業で受け入れられるシステムは何か?」
とはいえ救いがないのでおまけ。
製造業で受け入れられるシステムは何か?
- 人に自慢しやすいもの(世界初、カッコいい、見た目が派手など)
- やりたくない仕事(存在意義を感じない業務・不得手な業務・嫌いな人と関わる業務など)を手放せそうなシステム
- 関係者、説明相手(担当者の裁量で導入が決められる)が少ないシステム
取るに足らない内容ですがやり方次第です。ご参考まで。
そんなことを考える大晦日。
では良いお年を。
おわり
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